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記事タイトルに、《べき》はない。

ライターズドキュメント

あいさかです。

記事タイトルについて、著者のかたから「直されると思った(これでいいんですか?)」というフィードバックをいただくことが数度ありました。そのたび心のなかで「(わかる!)」と叫ぶのですが、これはこれで説明不足感がいなめないので、あらためて説明いたします。

だいたいのウェブメディアは「最適化」を求めている

まず、大前提。ウェブで「ライター」が求められるのは、だいたいの場合、最適化したターゲットに最適化した情報をテキストと画像で届ける職能です。その肝になるタイトルというのは、ほんとうにギリギリまで最適化されます。

たとえば、東京の新宿にある宴会コースありの居酒屋を、周辺の会社の飲み会で幹事をしているひとに向けて紹介するなら、『【幹事必見】新宿周辺で宴会コースありのおすすめ居酒屋10店』とかになるわけです。もし、これを『新宿駅の近くにある美味しい居酒屋さんを何店か紹介』にしていたら、先ほどの「直される」が発生するでしょう。

ウェブライターにおける「タイトルを直される」というのは、運営者がどこにどう最適化したいのか考えていなかったか、考えていたけれど共有できていなかったか、共有できていたけれどライターが理解できていなかったか、理解はできていたけれどタイトルに落とし込む職能がなかったか、という話だと思います。

なぜ最適化を求めるのか

インターネットは「情報の海」とたとえられることもありますが、コンテンツ単位で見ればむしろ情報量は乏しいものです。紙の本と電子書籍をどちらも用いるひとは実感したことがあるかもしれませんが、紙や製本というものの情報量のおおさ、電子というものの情報量のすくなさ、ここに現時点での肝があります。おおいから良いとか、すくないから悪いということではなくて、それぞれの心地よさに影響していると思います。

ウェブにとって、コンテンツあたりの情報量がおおいとノイジーなんですね。宴会用の居酒屋を探している幹事が紙の雑誌をめくったときに「美味しい店」というノイズがあってもいいのですが、ウェブで探しているときに「幹事さん、美味しい店も知っておきましょう」という不要な情報があると不快ですぐに切断されてしまうわけです。

その不快感は、同時に処理できるものの量に左右されます。紙の本を読んでいて、左のページの上の角が折れていても、右のページを読みながら左手の手探りを用いて親指・人差し指・薬指を動かして戻すことができます。一方で、仮に電子書籍でおなじ現象があったとしたら、折れているところに集中して左右どちらかの手でタップして、正常になったことを確認してから、読んでいた場所に集中し直さなければならないでしょう。

情報の海と言われる割に、同時に処理できることはまだまだすくないものです(プログラミングを用いれば別ですが)。ようやくバタ足ができるようになった感じなので、自由に泳げるのは先々のこと。現段階での心地よさに合わせて、許容されるように最適化することがおおいです。

「最適化じゃない」方法のウェブメディア

ラゴンジュルナルは、ウェブであたりまえになっている「最適化」に対して、そこまで強く賛成しているわけでも信奉しているわけでもありません。最適化のウェブ世間からするとうざい存在です。

私たちがやりたいのは、「最適化じゃない」方法のウェブメディアです。文芸メディアじゃないくせに文芸を載せて、ハウツーメディアじゃないくせにハウツーを載せて、出版社じゃないくせに本を出版して、雑貨屋じゃないくせに雑貨を売って、イベンターじゃないくせにイベントを開催したいと思っています。その蕪雑な世界観のなかで「いろいろあるし、いろいろあった」という多様な姿を見せていければと考えています。

「べき」だけを唱えるひとたちが隠したいこと

もちろん専門でやっているからこそ熟知しているものがたくさんあって、そのコモンセンスからくる「べき」もあります。その「良識的べき」には複雑な背景があるので、良識的べきをもつ業界人はいつも知的にふるまっています。

たとえば、大なり小なりのイベントや勉強会などを開いたことがあるひとはわかると思いますが、外からひとを集めてなにかをするときに主催者は責任者となり、安全配慮義務というものが生じます。なので、「安全配慮的べき」が膨大に膨れ上がり、それを熟知しているイベンターや主催者は、じぶんやスタッフ、お客さんに対して「べき」を大量に要求することになります。すべては安全のための「良識的べき」だと言えるでしょう。(救急車の進入経路が言えない主催者にはご注意を)

その一方で、「背景なきべき」だけをこわだかに唱えるひともいます。タイトルはわかりやすくないといけない。アイキャッチ画像にフリー素材を使ってはいけない。日付を明記すべき。SNSシェアボタンを表示すべき。それらはそのひとの知っている狭い世界での最適化であって、それ以外ではありません。

背景なきべきを唱えるひとは、「ほんとうはいろいろだ」ということを隠しておきたい。じぶんの知っていることを良識だと思い上がってしまいがちです(私もよくあるので私がそうなっていたらマサカリを投げてほしい)。

ラゴンのタイトルは「表現」と「好み」、わかりやすさは二の次

私から著者のかたに要求していることは、一貫して「生活の自己表現」です。もちろんタイトルもそうであってほしいと願います。検索にひっかかるキーワードも、わかりやすさも、字数制限もいりません。そういうのが「好み」ならもちろん構いませんが、好みでなければ不要とご理解くださいませ。

たとえば、私の場合、キーワードを入れつつ長くて重たいタイトルが好きなので、『自炊というものの射程を追って、サッポロ一番みそラーメンに食指が動くかどうかで一喜一憂したい』みたいなタイトルになります。

著者のなかには、主語をひろくとったタイトルが好きなひと、二枚めなタイトルが好きなひと、純文学ふうのタイトルが好きなひと、物語を感じさせるタイトルが好きなひと、「〜な話」という要約ふうタイトルが好きなひと、逆に内容を盛り盛りに詰め込んだタイトルが好きなひとなどいろいろです。

それでいいんですね、いろいろで。そのなかで、冷笑はやめようとか、マウントはやめようといった規則があって、できれば守っていきたいなあと思っています。これについても「べき」とは言いません。私自身は冷笑とか好きじゃないですが、その一方で人間から冷笑とマウントを取り除いたイメージを私自身が受け容れていないんですね。このあたりは言語化が複雑なのでまた今度。

表現をタイトルにする方法

「本文で表現したいことはしたけれど、タイトルでどうやるの」というのはもっともな疑問です。

おおきく分けてふたつあって、ひとつは「プルクオート」、もうひとつは「コピーライティング」です。

プルクオートというのは、本文の印象的なことばを丸々転載することです。どのメディアもやっていることなので、かなり一般的な手法なんだと思います。

たとえば、下記の記事は、哲学者の「存在を消しながら判読可能にしておく振る舞い」という表現を本文でアレンジして用いていて、それをそのままタイトルにプルクオートしているかたちです。わかりやすい例ですね。

エウダイモニア、衣食住を消しながら判読可能にしておくこと | Lagon Journal
https://lagon-journal.ink/blog/in-thoughts/eudaimonia/

おなじく、この記事も本文冒頭で「scrūpus」ということばのイメージから出てきた表現をそのままプルクオートしてタイトル化しています。

冨安由真「くりかえしみるゆめ Obsessed With Dreams」展、私の自動化を摘発する靴のなかの小石の経験 | Lagon Journal
https://lagon-journal.ink/blog/jaunt/obsessed-with-dream/

一方で、「コピーライティング」というのは、表現を拾ってきたうえでさらに効果的なかたちに加工することです。短くしたり、リズムにしたり(英語系メディアだとタイトルで韻を踏んだりします)、一重否定をしたり、倒置したり、あえて逆のことを言ったり、かるく不穏にしたり、おおげさにしたりなどですね。

この記事では、谷川俊太郎さんと鳥居さんの表現にフォーカスして、そのうえで「詩と、お金と、アウシュビッツの短歌」というふうに奇妙な並びになるようにしました。どんどん関係なさそうにしていくことで内容が気になるという狙いです。

「ウエノ・ポエトリカン・ジャム6〜はしれ、言葉、ダイバーシティ〜」レビュー 詩と、お金と、アウシュビッツの短歌 | Lagon Journal
https://lagon-journal.ink/blog/jaunt/poetrican-jam/

加えて、この記事は前半で要約して、後半で単語をふたつ並べて、前半の要約に表現的な肉付けをした感じです。「ホテルの夜勤ね、はいはい、オテリエ?」と興味をもってもらいたいという狙いです。

ホテルの夜勤で働きはじめた話、オテリエとオスピタリテ(L'hôtellier et hospitalité) | Lagon Journal
https://lagon-journal.ink/blog/such-days/hotelcleaning-job/



こんな要領でタイトルを考えてもらえるとうれしいです。表現はしたけれど、編集目線でどの表現が光ってたか教えてほしいなどあれば、雑談程度に話しかけてもらってだいじょうぶですので、お声かけくださいね。

Written by Aisaka, Chihiro
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