『ラゴン・ジュルナル』に来てくださってありがとうございます!

「JavascriptをOn」にしていない端末やブラウザで閲覧しているかたに、このアラートが表示されるようになっております。Javascriptを許可してからおたのしみくださいませ。

Chrome「設定」→「詳細設定」→「プライバシーとセキュリティー」→「サイトの設定」→「Javascript」を許可 iPhone「設定」→「Safari」→「セキュリティ」→「Javascript」をオン iPad「設定」→「Safari」→「詳細」→「Javascript」をオン Android「メニュー」→「設定」→「高度な設定」→「Javascriptを有効」など

『雨の降る日は学校に行かない』 相沢沙呼著

青春、と言われても、ピンとこない学生時代を送ってきました。

人見知りなので交流は狭く、部活にも入らず、図書室に籠もっていた記憶ばかりです。図書室から教室に戻る時、どこか憂鬱な気持ちになっていたのは、あまり学校が楽しくないと感じていたのかもしれません。

でも、そんな色あせた青春を送ってきた人にこそ、強く響く小説もあります。

それは、『雨の降る日は学校に行かない』という作品です。

『雨の降る日は学校に行かない』は、クラスに馴染めない少女たちを描いた短編集です。

保健室登校をする子の話。
 スカートの長さでクラスの立ち位置が決まる話。
 黙々と絵を描く男子に話しかけたら、カップルとからかわれ始めた子の話。

ニュースやネットで散見するような物語は、学生時代に辛い思いをした人には突き刺さるものばかりです。

劇的なドラマはないかもしれませんが、暗い世界に一筋の光が差すような、そんな読後感を与えてくれます。

では、劇的なドラマがないのなら、この作品はただ重暗い話なのでしょうか?

そうではないと、私は思います。この作品の本質は、「誰でも抱えている弱さと向き合う」前向きさも秘めているからです。

例えば短編の一つ、『ねえ、卵の殻が付いている』は、外の世界に出る瞬間を切り取った作品です。

保健室登校をする二人組、ナツとサエ。

誰からも馬鹿にされることのない世界で、静かな時間を過ごしていました。しかしある日、サエが「自分のクラスに戻る」と言い出し、ナツの心は揺れ動きます。

ナツには、教室に戻る理由がわかりませんでした。

複雑な家庭環境や、大きなトラウマがある訳ではありません。けれど、「教室に戻る」ことが、素敵な風に思えなかったのです。

なにかひどいことをされたわけじゃない。明確な理由があって傷ついたわけじゃない。ただ、ばかにされてるような気がするだけ。だから、どうして教室に行かないのって聞かれると、答えられなくなる。教えて欲しくなる。わからない。わからないんだ。自分にもどうしてなのか。どうして、脚が震えるのか、身体がすくんでしまうのか、ほんとうに、わからない。サエはどうだったんだろう。サエにとって、教室ってどんな場所だったんだろう。 (29ページ 「ねえ、卵の殻が付いている」より)

はっきりとした理由はないけれど、もう学校に居場所がないと、ナツは直感的にわかっていました。

原因が曖昧だからこそ、正体の見えない不安は膨れ上がって、心を縛り付けています。

やがて、ナツが保健室を抜けだし、サエの待つ教室へ向かうシーンは、こんな風に描かれています。

サエは戦っているんだと思った。自分に負けないように。逃げたまま終わらせないように。だから、あたしも、そこに行きたかった。ここじゃない場所へ。あなたのいるところへ。あなたが戦っている場所に。それは、強がりかもしれない。また脚は震えてすくんでしまうかもしれない。時間がかかるかもしれない。それでも── (39ページ 「ねえ、卵の殻が付いている」より)

教室に向かう、たったそれだけのことです。けれど、それがナツやサエにとっては、ものすごく勇気の要る行為でした。

腫れ物扱いされるかもしれない。
 裏で笑われるかもしれない。
 勉強に追いつけないかもしれない。
 息苦しい生活に戻るだけかもしれない。

それでも、二人は保健室の外へと出ていきます。

この本では、保健室登校や不登校を、否定も、肯定もしていません。暗い世界から救ってくれる、格好良いヒーローも存在しません。

だから、たくさん間違えて、傷ついて、最後には自分の弱い部分に向き合う。そんな瞬間に、不思議と引き込まれるのです。


また、四六判の帯に、坂本真綾さんがこんなコメントを書いています。

「コンプレックスのない女の子なんて、いない。」

この一言に尽きると思います。きっと、女子だけでなく、男子にも言える言葉です。

人付き合いに悩む学生の方、青春の傷跡がある大人の方にも、読んでほしい一冊です。

物語たちは、この先彼女たちはどうなっていくのだろうか? といったところで幕を閉じます。

なので、主人公たちの選択は正しかったのか、誰にもわかりません。

だから、モヤモヤした部分を、「過去の自分ならどうしたか」「現在の自分ならどう動くだろうか」と行間を考えるところに、この本の味わい深さがあるのだと思います。

文庫だけでなく、単行本も重版されているため、学校の図書館に置いてあるところもあるようです。ぜひ探してみてください。

私の高校時代はつらい思い出ばかりでしたが、この本を読んだ後、少しだけ愛せるようになりました。

あなたは、何を感じるでしょうか?


また、YouTubeで、声優の高橋李依さんの朗読が聞けます。

聞けるのは物語の前半部分ですが、繊細な心情描写と、しんしんとした語りが、じんわり染みます。こちらも是非聞いてみてください。

高橋李依が読む「死にたいノート」前編(相沢沙呼『雨の降る日は学校に行かない』より)
https://www.youtube.com/watch?v=lqT1S77-ST8&feature=emb_title

書誌・クレジット

タイトル

雨の降る日は学校に行かない

著者

相沢沙呼

発行者

村田登志江

発行

株式会社 集英社

印刷

凸版印刷株式会社

製本

加藤製本株式会社

カバーデザイン

アルビレオ

イラストレーション

ゆうこ

ページ

271ページ

体裁

文庫

発行年

42819

版と刷

第一版

参考にした記事

※作者、相沢沙呼のnote

ねえ、卵の殻が付いている
https://note.com/sakomoko/n/n275ad94c5326
死にたいノート
https://note.com/sakomoko/n/nd2adfcc2fe59

Written by Momono, Touka
Copyright LagonGlaner and Author

「ラゴン・レキシク Lagon Lexique」は、ことばとの出会いを大切にするランダム語釈表示サービスです。ふだんの生活では出会えないことばが収録。どなたでも無料なのであそんでみてください!

運営や著者に声を送る かしこまらず、あなたの温度感で。 フォームへ飛ぶ
Liana Mikah
ブログ 思いつづるひとつひとつの日々。
Agathe Marty
エッセー それぞれが一回に懸けるもの。
daniel petreikis
Note

細心の注意を払ってはおりますが、万が一このレビューにおいて、名誉権の侵害(名誉毀損)・営業権の侵害(営業妨害)・著者権の侵害などになりそうな点がありましたら、お手数ですがご指摘・削除依頼のほどよろしくお願いいたします。なるべく早く修正・非公開できるよう努めます。

報告する・問い合わせる