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ラジオのメールは、送ること自体に意味がある。「月の音色~radio for your pleasure tomorrow~」を聴いて

お便りが生み出すエネルギーを感じた話

私は長い間、お便りを送らずにラジオを楽しむ──いわゆる「聞き専」として楽しんでいました。

厳密には、ラジオへメールを何回か送ったことはあります。けれど、私の文面はいかんせん堅苦しくて、読まれたことはなかったのです。ラジオで取り上げられるメールはみんな、ユーモアに溢れてたり、話題作りが上手だったり、何かと気の利いた文章ばかり。

だから、

送ってもきっと読まれない。
ラジオを盛り上げる小粋な文才なんてない。
だったら聞くだけでいいじゃないか。

そんな諦観が、胸の内に生まれていました。

しかし、私の手元に届いた一通のハガキが切っ掛けで、その諦観が取り払われることになりました。

お便りというのは、「読まれた」「読まれなかった」と、リスナーの一方的認識で決まる話ではなく、メールと言えどもお互いのコミュニケーションで成り立っているのだと知ったのです。



その切っ掛けとなったのは、朗読ラジオ「月の音色~radio for your pleasure tomorrow~」でした。

本は好きだけれどなかなか読む時間がない。
なにを読んだらいいかわからない。気分転換したい。
ゆっくり眠りたい。癒やされたい…そんなあなたへ贈る、珠玉の朗読番組。
声優・大原さやかが自らこだわりの作品を選び、心をこめて朗読します。
明日のあなたへの、ささやかな活力になることを祈って。

公式サイトより引用)

声優の大原さやかさんが、おすすめの本を紹介したり、童話や短編を朗読していく、柔らかなトーンのラジオ。当時の私は就活真っ只中で、面接や説明会の帰り道に聴いていました。朗読で紡がれる優しい物語の数々は、疲れた心を癒してくれました。



そして、変わる時が訪れたのは、第69回、「願いの町」の朗読。物語は、小説家を夢見る女の子・冴崎が、進路に悩む話。担任の先生は「小説家は稼げない」と現実的進路を示し、妹は「高がしれてる」と一蹴、そして度重なる小説のコンクール落選。耐えきれず冴崎は学校を飛び出す。

 気がついたら、涙を流していた。
 みんな私に、話を書くことを、「そんなこと」って言うんだ。
 そう言われたって、何したって、私は書くのをやめたくはない。

<引用元>著:小池夏美、絵:下元綾華『願いの町』(『尾道草紙11』所収 尾道大学創作民話の会刊, p.46)

冴崎の行き場のない感情が、大原さんの演技に乗って伝わってくる。静かな語りの中に、やるせなさや悔しさが滲み出ている。

気づけば、私はぼろぼろと涙を流していました。

私自身も、趣味ではありますが小説を書いていました。文章を書くことは大好きだった。けれど、才能の無さや周りの目線を気にして、いつしか小説から離れ、就活と格闘するようになった。

そんな、妥協と疲弊にまみれた私をどこか認められない自分が居て、まだ小説と向き合っていたい自分が居て。だから、この物語はあまりにも突き刺さりました。



ラジオを聞き終え帰宅した後、勢いでメールを書きました。やはり内容は面白味はなかったと思います。「就活を頑張れそうです。この作品を選んでくれて本当にありがとうございます」みたいな、真面目な文面です。

けれど、ラジオ内で読まれるかは関係ありませんでした。大原さんは読み上げられなかったお便りにも目を通していることは公言しているのだから、いちリスナーの声として伝われば十分でした。

そして二週間後、『月の音色』の朗読の感想お便りコーナーを聞いていました。優しいラジオであるように、読み上げられるお便りも、みんな繊細ながら温かみのあるものばかり。

そんな中に、聞き覚えのあるラジオネームが一つ混じっていました。

私の、送ったメールでした。

愕然とする私を置いて、尊敬する声優さんは、勢いで綴られた文章を読み上げていきます。読まれるのが初めてというのもありますが、気恥ずかしさと嬉しさが入り混じったような、不思議な気持ちでした。

この時、感想を送ることに巧拙なんて関係ない、等身大の気持ちを書くのが大事だと知ったのです。



さらに二週間後、私の家に、一通のハガキが届いていました。

送り主に書かれていたのは「月の音色」。

毎回、その回で特に良かったお便りに感謝のハガキを送る、というものがあり、私はそれに当選していました。私は息を呑み、急いでポストから自室へ戻りました。

ハガキの裏面は、手書きの文字とビーズで彩られ、手作り感に溢れていました。「ラジオを初回から聞いてくれてありがとう!」「また何か良かった朗読があったらお便りを送ってくださいね」といった旨の文面。

そして、最後に、

「就活、ファイト!」

また、私は泣いてしまいました。



ファンレターのようなものは、あくまで一方通行な感情だと、私は思い込んでました。

メールだから形に残らない。見返りなんて求めてない。相手の励ましになれば、それでいい、と。

だから、逆に自分が励まされるなんて思ってませんでした。それも、ハガキという形に残るもので。



結局のところ、私はいわゆる「ハガキ職人」ではありません。

ここまで綴ってきた文面がそうであるように、いざ書き出すと、やはり真面目な文章になりがちです。

でも、それでも、言葉はちゃんと届くのだと、書くことに意味はあるのだと。あのハガキが教えてくれました。

だから、私は今日も見えない手に押されるように、メールボックスに、言葉を打ち込むのです。

Written by Momono, Touka
Copyright LagonGlaner and Author

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