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立ちはだかる人工的なきついにおいににじりよる

得体の知れないにおいとの攻防

こんばんは。龍山香名です。においについて。

私はひとと比べてほんの少しだけにおいの好みにうるさいと自覚しています。といっても、においの判別が得意だとか、自分にとっての至高のにおいを持っているとか、そういった特技と言えるほどのものではなく、ただ「苦手なにおいが多い気がする」くらいのものですが。

まず、大体のシャンプー・リンス類のにおいは苦手です。「爽やかな花畑の香り」とか「上品で官能的な甘い香り」とか「麗しい朝日の香り」とか(これらの例はそれっぽい名前を即興で書いたもので、何かの製品を指し示す意図はありません。)、香りの名前はそれだけで奥が深くて本が一冊では足りないほどですが、とにかくシャンプーにありがちなにおいが苦手です。人工的なきついにおいという感じがします。

制汗剤もあらかた苦手です。体育の授業後に自分が汗くさいことを心配して更衣室で制汗剤を振りまくひとがひとりはいるかと思いますが、あれは大変でした。おかげでなるべく息を吸わずに高速で着替える術を身につけました。高校の調理実習で魚を捌く会がありました。自分の手が生臭くなったことがおそらく嫌だったのだろうと思うのですが、実習が終わりお腹も満足しながら教室に帰ると制汗剤のにおいでまみれていたことがありました。しばらく教室に入れませんでした。人工的なきついにおいという感じがします。

その他、洗濯用洗剤、柔軟剤(たぶん)、ヘアオイル、部屋やトイレなどに使うための芳香剤、ボディソープ、食器用洗剤などのにおいが大体苦手です。「柔軟剤(たぶん)」というのは、中学の頃クラスメイトにジャージを貸したら後日洗って返してくれたのですが、そのときのジャージのにおいがすごかったという記憶を思い出しながら書いているからです。たぶん柔軟剤だと思います。きっとおしゃれに洗ってくれたのだろうににおいにばかり気を取られてしまって今更ながら申し訳ない限りです。(もちろん、その場で「においすごいね。」などとは言っていません。ご安心ください。)どれも人工的なきついにおいを感じて苦手です。

ちなみに、これだけ苦手だ苦手だと言っておきながら、店頭にあるにおい見本を嗅いだりテスターを手に出して嗅いだりするのは好きです。9割方「うっ」と顔をしかめておしまいなのですが、なかなか学習しません。今日も明日もお店でにおいを嗅いでいると思います。また、つい新しい製品、つまり新しいにおいのするものを買ってしまうこともよくあります。鼻がにおいに慣れてくれることに期待しています。

しかし、この「人工的なきついにおい」とは何でしょうか。「きつい」はにおいの強さの話だとして、「人工的な」とは何でしょう。

「人工的」の意味は「人が何かをした」ということです。実際、世に売り出されている製品のにおいはすべて誰かが作ったものです。天然のにおいだと謳われるアロマ精油だって、誰かが植物からにおいをうまいこと集めて濃縮した結果のものです。おそらくこの場合の「天然」に対する「人工」とは、自然のものから抽出したのではなく研究所や工場などで合成した香料のことを意味するのだろうなとは思いますが……ともあれ、そうするとそういった意味での「人工的」が原因ではないように思えてきます。私はあらゆるにおい付き製品のにおいが苦手なわけではありません。実は先程大体のシャンプーなどのにおいは苦手だと書きましたが、柑橘系のにおいだけは別です。製品を問わず「シトラス」という単語が入っている香りであれば気に入る傾向にあります。

そして食べ物。コーヒーのにおいとチョコレートのにおいは特に好きです。それと調理中の料理のにおい。料理を作るときはつい頻繁ににおいを嗅いでしまいます。今の味の濃さがわかるような気分になります。わからないはずなんですけれどね。食べ物以外でいうと、新しい紙のにおい。新品の本のにおいというべきでしょうか。あれもまたいいにおいです。

一番簡単な回答は「好みの問題」です。おそらくこれが正解です。しかし、それではどうにもおもしろくないので、私なりに悪あがきをしてみます。

ここで、柑橘系のにおい付き製品のにおいは好きになりがちということを一旦無視させてください。すると、視覚的な情報の有無が大きく関係していそうに思えます。食べ物のにおいは、目の前に食べ物そのものがあるから嗅げるものです。紙も同様です。たとえば「爽やかな花畑の香り」のにおいを持つ製品は目の前に花畑なんてないのに花のにおいを発しています。そもそも私は花畑に行ったことがあまりないので、それが本当に花のにおいなのかもわからないのですが。そういった感覚の違和感が「苦手」という感覚を引き起こしている可能性があります。

まあ、今の仮説は柑橘系のにおい付き製品のにおいは好きになりがちということを無視したから言えたことなので、すぐに却下されてしまうんですけれど。

では、柑橘系のにおいならば問題ないらしいことを考慮に入れてみます。思うに、柑橘系のにおいはあまり振れ幅がないのではないでしょうか。つまり、「柑橘系のにおい」を示すための方法はほぼ一択しかないのではないかということです。思い出してみれば、今まで嗅いできた柑橘系のにおいはほぼすべて同じようなにおいでした。一方、花のにおいとか甘いにおいとかは本当に様々で、嗅ぐまでわかりません。知っている、予想のつくにおいだから拒否反応が出ない。逆に、名前を見なければ何のにおいなのか判別がつかない不明瞭なにおいに対して苦手だと感じている。コーヒーのにおいも食べ物のにおいも、何のにおいかは目の前にそのものがなくてもわかります。喫茶店の前を通るとき、お菓子屋さんの前を通るとき、そこにお店があると知らなくてもにおいを嗅げば何のお店があるのかなんとなく予想ができます。本屋さんは、さすがにちょっと、道を歩いていて紙のにおいを察知できるほど敏感ではないので気づけませんが。

なかなか納得のいく仮説が出てきました。何のにおいかわからなくて混乱した結果、苦手だと感じるようになっているということですね。しかし、明らかに何のにおいを表そうとしているかがわかるようなものでも苦手だったりすることもあります。これはなぜでしょう。そういうにおいを嗅いだときの共通点を思い出してみると、すぐに判別がつくにおいによくわからないにおいが混ざっているようなときに、○○のにおいということはすぐにわかるのになぜか苦手という判定を下しています。つまり、「○○のにおいってことはわかるんだけど、なんかちがう」という状態です。

どうやら、なんかよくわからない、なんかちがうというのが「苦手なにおい」の判断基準のようです。すっきりしました。「人工的なきついにおい」はつまり「正体不明のにおい」ということでした。なぜ私がそんな表現を選んだのかは定かではありませんが、おそらく「においの付けすぎ」という感覚から出てきたものではないかと思われます。たとえば、香水は身体ににおいを付けるものですが、香水のにおいが身体から漂うという状況はとても不思議なことで、まさに「人工的」と表すしかありません。同じように、シャンプーとか洗剤とかも、もともとはかなり薬品くさいにおいなのではないかと想像できるのですが、そこににおいをあれこれ付けています。そういったにおいの上書きに対する感想が「人工的なきついにおい」になったのではないでしょうか。

私にとっての「苦手なにおい」とは正体不明のにおいということで、「人工的なきついにおい」とは不自然なにおいをまとっていることを指しているようです。これが本当かを確認するために明日からまたお店でテスターのにおいを嗅いで回ろうと思います。

ただ、ここまで書いておいて何ですが、制汗剤だけは別です。あれは柑橘系のにおいが付いていようと食べ物のにおいが付いていようと構わず苦手です。ここまできてはっとしましたが、おそらく、これはにおいというよりも制汗剤特有の清涼感を出すための成分が鼻に合わないのだと思います。あれは本当にだめです。

また、正体がはっきりしていてもくさいものはくさいです。腐った牛乳とか、「あ、生命の危機。」という表現がまさにふさわしいにおいですし、大便だって何のにおいかすぐにわかりますがくさいですし苦手です。牛乳に関しては危ないのですぐに捨ててくださいね、舌がピリピリして、これまた生命の危機を感じる味がします。今回の話はあくまで製品に付いているにおいに関するものです。いいにおいの製品として販売している(はず)以上、苦手と感じるこちら側のほうに何か理由があるはずと考えたために疑問が生まれたのであって、それ以外のもののにおいについては度外視しています。……という大前提に今、気づきました。

それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。今日も一日、おつかれさまです。

Written by Tatsuyama, Kana
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