『ラゴン・ジュルナル』で使用しているレギューレーションです。なにか参考になることもあるかと思い公開しております。
ラゴンでは、編集判断のときに議論のベースとして用いています。「正解」というイメージでは全くありません。むしろ「正解」から距離をとっていただきたいです。レギュレーションなんかがあると正解否認が難儀になるかもしれませんが、それでも正解なんか考えないでください。
レギュレーションはあくまで編集判断を進行するときに、議論のエターナル状態を回避する目的でつくられています。つまり、なにもないよりなにかあるほうが話が進むからです。そのため、カバレッジ(遵守具合)について強く叩き込むことはありませんし、私どもでカバレッジ率をあげたいなどと意識することも滅多にないです。
ただし、禁止行為については、深く理解していただきたいです。よろしくお願いします。
Webでは全角アキすると逆に読みにくいという意見もあります。ただ、私は文章の最低保証として段落行頭全角アキを信じているためレギュレーションとして採用しております。また、字下げをcssで制御する理由は、「全角スペース」が空白の文字情報だからです。あくまで字下げは字下げであって文字ではないと考えているので、できるだけ文字で行いたくないと思っております。またテクニカルな問題として、空白文字を入れた場合は後続する内容によって字下げが間延びしたりするので、いつでも1文字分をとれるようにしております。ただし、ライターからの原稿が全角スペースになっているときは、おおむねそれに従います。行頭約物の詰めについては、約物だけ半角にしてくれる「YakuhanJP」というデザイナーズフォントをお借りしつつ、現状のCSSで完璧にコントロールするのは難儀なため無理せずブラウザに従います。
(1-1)
AndroidOS端末では「YakuhanJP」が反映されておりません。
日本語組版では全角アキを入れるので、開設当初はなにも考えず全角アキを入れていたのですが、Webだとアキが目立ってざわつくため半角スペースを採用しております。ただこちらも著者のテイストに従います。
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Webの横書き長文を読みやすくするために段落に大きく余白をとっています。ただし、著者の原稿にできるかぎり合わせます。アキをとらない著者もすくなくないので、ベースとして行の高さをすこし高めにとっています。
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ラゴンでのもっとも大事な用法として、特殊な文脈のなかにあることばは、できるだけカギ括弧か、それに近いものを用いてもらいたいです。こどもが一年前のことを「昨日」と言って大人がなんのことだろうと困惑するように、書き手と受け手でイメージしていることがおおきく異なります。大人は「それは一年前だ」とあたまごなしに訂正するでしょうけれど、こどもにとっては「昨日」です。生きている時間、感じている世界がちがうことの証でもあります。そのギャップを肯定したいし、大切にしたい。だからこそ、私にとっての意味や文脈が盛り込まれているよ、という合図としてカギ括弧を付与してもらいたいと思います。無理強いはしません。
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オールドスクールな組版を尊重します。とはいえなんでもかんでも二重カギ括弧をつけるのではなく、著者がそのタイトルや作品に特別な意味合いやメンタルなニュアンスを注いでいる場合は、二重カギ括弧のきっちり感が逆に邪魔になるためつけないことを推奨しております。
(2-2)
前述の通り「YakuhanJP」を使用しているので詰めがちょうどいい全角を推奨しております。
(2-3)
感嘆符と疑問符とト書きは、感嘆符疑問符のほうを本文に近づけ、ト書きを後回しにします(「〜でした!(笑)」)。
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ダッシュは「U+2015 HORIZONTAL BAR」を二倍で使用、三点リーダーは「U+2026 HORIZONTAL ELLIPSIS」(……)を二倍で使用します。三点リーダーが仮想ボディの中央にくるフォントを優先して使用したいですが、ブラウザの環境などによってはベースライン上にくることもあります。この実装依存については諦めております。中黒三連打(・・・)も許容しておりますが、世間体のために一声おかけしております。欧文の場合は欧文組版にならってエリプシスを用いますが、三点リーダーでも許容しております。
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二倍ダッシュには「letter-spacing: -0.1em; padding: 0 4px;」のcssを与えています。
一般的にはスペースに対して中黒(・)、ハイフンに対してダブルハイフン(゠、U+30A0 JIS 1面3区91点)を当てがちですが、定めずに自由とします。分けたくないものは分けなくてもよいです(たとえば私は「メメントモリ」を分けずにひとつの名辞として捉えているので中黒を入れませんが、逆にもともと一単語の「ソフトウェア・ゴア」は読みにくいしわかりにくいと考えて分けてます)。なにごともなければ慣例にのっとることをおすすめします。ダブルハイフンが等号や下駄文字になっている場合はお声かけします。英文の斜めダブルハイフン(U+2E17)ももちろん許容です。また、分かれていないのに分けている場合は一声かけます。
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「1,000円」など。
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できるだけ一般的な国語の読みに近づけたいという思いがあり、ひらがな書きされやすい種類については開く依頼を出すことがあります。文体を意識して依頼を出さないこともよくあります。言わずもがな専権は著者にあります。
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例)「言ったこと(事)にする」「よく遊んだもの(物)だ」「はず(筈)だったのに」「するわけ(訳)がない」「聞いたところ(所)で」、「でき(出来)なかった」「してみ(見)よう」、「読んでほ(欲)しい」、「とい(言)う出来事」、「つくづく(熟)」などなど。そのうち一覧化します。
「履く」と「穿く」、「出会う」と「出合う」、「引かれる」と「惹かれる」と「魅かれる」、「ずくめ」と「づくし」、「良い本」と「してもよい」、似ているようで微妙にニュアンスが異なっていたり、ことばの微差にできるだけ着目します。書籍や新聞の用字、文化庁の調査、いくつかの国語辞典などを頼りに慣例を提案します。言わずもがな、専権は著者にあります。
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一部のひとの不興を買うのは承知ですが、カジュアルだと思っています。ライターから個別に指摘依頼があった場合はチェックします。
(3-3)
過剰修正もことばの一種だと思っています。それゆえ同前ですが、齟齬があって難儀な場合は確認だけします。
(3-3-2)
よくあるのが「Youtube」「twitter」「word」「yahoo」「Wordpress」「PRTIMES」「photoshop」などの細かい誤記です。名前を出すからには失礼のないよう努めたいです。また、「何何社さん」のように法人格に敬称をつけることは、媒体と企業の親しい間柄を誤解させやすいためどのライターにも推奨していません。ただし、推している企業やメーカーに感謝を告げるような文脈では可です。
(3-4)
「さん」「氏」などが一般的です。
(3-5)
表記揺れを根絶するという方向性ではありません。表記も表現と考えている読者のために均しておくことを目指しております。
(3-6)
東京方言も方言として考えます。
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「トーキョーエキハドッチデスカ」などのカタカナ書きは排他的なニュアンスがぬぐいきれないため、媒体のトンマナに合わないと考えております。
(3-8)
むしろ重複を意識してしたくもない表現に変更しないでもらいたいと思っております。
(3-9)
気にならない場合がおおいので流しがちです。とはいえ、「ニューヨーク」のことを発音に近づけて「ヌーヤーク」とされると読みにくさが表現を超えてしまって損なうこともあるので、そのあたりを意見交換するかたちになります。
(3-10)
略語は内輪のノリになりやすいですが、一方で独特の豊かさを持っています。どちらを優先するかそのときどき見ながらになると思います。
(3-11)
ときどき一文ごとに文末や語尾を変えなければならないとしているプロダクションもありますが、ラゴンでは特段どうこういうことはありません。仮に文末の処理でなにか言わなければいけないとしたら、文末以前に文章の精彩もテンポも死んでいるはずなので改稿依頼かボツ依頼をいたします。個人的に文末処理を意識することはまったく問題ありません、美意識が宿ると思います。
(3-12)
たとえば「〜させていただいております」「〜というかたちになっております」など。ひとつの文体やテイストだと思います。
(3-13)
「美しすぎるアスリート」などの炎上につながりやすい修飾語、「豪華メンバー」などの旧式構造が背景にありそうな惹句などが念頭にあります。頭ごなしに編集することはなく、なぜ必要だったのか、なにが豪華なのかなど意見交換したいと思います。
(3-14)
いちばんよくある引用がWikipediaです。かならず「Wikipedia:ウィキペディアを引用する」(https://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%9A%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%92%E5%BC%95%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B)を参照するようお願いしております。
(4-1)
同前、できるだけきっちりやる。
(4-2)
もじり・パロディ文化は好きです。だからこそきっちりやりたいという思いがあります。
(4-3)
最近、プログラミング言語の「Python」が登録商標であることを知りました。勉強・リサーチ不足です。校正の努力義務を自らに課します。
(4-4)
ライトなものも含めて禁止です。軽く茶化すときでも最大のバランス感覚でお願いします。また、ここでの「差別」「ヘイト」というのは個人的な感情ではなく社会学的な意味です。
(5-1)
たとえば「昨日」「3時間前」など。テキストは非同期的ですが、記事単位でおおまかにいつのものなのかわかるため注釈や補足は入れない方向です。どうしても必要なときに「いついつの記事です」と補足します。こうした編集的注釈は文章を損なうと思っているので、できるだけ入れないで済ませたいです。
(6-1)
たとえば、これを書いているときは「菅総理」ですが、そのうち「前総理」になり、そのあと「元総理」という表現に変わります。そのためメンテナンスしなくてもいいように「現時点での」と注釈しますが、余計な注釈が入るとつまらない文章になるため非推奨です。
(6-2)
それ以外はとくにないです。もしターゲッティングした記事をつくりたい場合は、私のほうで明確化したうえで企画をご相談すると思います。
(6-3)
ウケ狙っていきましょう。
(6-4)
よくあるのは「メリークリスマス!」「ハッピーハロウィン!」など。
(7-1)